ビッグコミックスピリッツ系雑誌で連載された、林田球・作「ドロヘドロ」9巻の紹介です。
記憶喪失のトカゲ男・カイマンが自分の本当の姿を探して、魔法使いの世界を旅するダークファンタジーとして知られています。
個性的な登場人物、複雑な世界設定が人気です。
前回の話:ドロヘドロ【8巻】のネタバレと感想。ギョーザ男の初登場は何巻?
ドロヘドロ【9巻】のあらすじとネタバレ
【鳥太の魔法が解けた!その時カイマンとニカイドウは?】
アスは悪魔チダルマによって、魔法使いに戻されてしまいます。
それと同時に、鳥太にかけられていたニカイドウ化の魔法も解除されてしまいました!
一方、カイマンは「ザガンシティ」で過去の記憶の鱗片を思い出し、自分の正体が悪人ではないかと疑い始めます。
不安定な心をニカイドウは支えるのですが。
「ザガンシティ」の魔法専門学校は、カイマンの母校?
カイマン達は、ベリスに行く途中「ザガンシティ」に立ち寄ります。
深夜にも関わらず、「ザガンシティ」のある建物を見たカイマンは、その建物に向かって走り出します。
カイマンはこの建物を見たことがあったのです。
そこは「ザガンシティ魔法訓練学校」。
すでに廃校となった建物でした。
ニカイドウと夏木を待たせ、カイマンはさらに自分の記憶のを辿ります。
職員室でふとしたことから、生徒名簿を見たカイマン。
その中には「栗鼠」の名簿がありました!
カイマンの記憶が呼び覚まされ、頭部からは血が噴出します。
知らない部屋と、謎の死体がフラッシュバックし、栗鼠の恐ろしい顔が脳裏に浮かびます。
カイマンは恐怖のあまり、自分の顔を剥がそうとします。
ニカイドウと夏木は、職員室で倒れたカイマンを見つけ、保護します。
夏木がカイマンのための飲み物を用意する間に、ニカイドウはカイマンの十字目が消えていることに気づきました。
カイマンは言います。
俺はこの学校に通っていた、ここで栗鼠と出会った、と。
しかし同時に、カイマンは自分自身の中に恐ろしいものが存在していることも感じます。
自分はニカイドウを傷つけるかもしれない。カイマンは怯えます。
それをニカイドウは優しく抱き寄せ、大丈夫だよと気持ちを鎮めるのでした。
十字目のボスの蝋人形=カスカベ博士の知り合い!?
様々な困難を乗り越え、ホールに戻ったカスカベ博士一行。
心に蝋人形の男についての詳しい情報を与えるため、カスカベ博士は自分の資料を披露します。
これまでの魔法被害者たちの写真です。
写真には、蝋人形の男に似ているとされる人物の様子も収められていました。
その蝋人形の男はカスカベ博士の研究を手伝い、最終的には人体実験の協力まで行ったと言います。
写真からは同一人物と判断出来ないため心は、カスカベ博士の協力を得て、蝋人形の男の親族に会いにホールの町へ出かけました。
蝋人形の男と似ている、とカスカベ博士が指摘したのは、コールマンという少年です。
現在のコールマン宅には、老人しか住んでいませんでした。
すでに肉親であった孫は死んでしまったのだと老人は言います。
老人の孫が眠るという墓地にまで案内された心と能井、そしてカスカベ博士は本当にコールマンの孫が死んでいるのかを確認するため、墓を暴き始めました。
怒るコールマン氏ですが、心たちが暴いた棺桶の中身は空でした!
やはり蝋人形の男はどこかで生きているのか。
カスカベ博士は、蝋人形の男がゾンビ化していないかを確認するため「リビングデッドデイ」のプレートを管理する自治会に急ぎます。
十字目幹部たち、目指せ!「大家さんの自然な死」
十字目幹部たちは、家の権利を手に入れたものの、大家さんをうっかり殺害してしまいました。
大家さんは上級魔法使いですから、いつ煙から嫌疑の目を向けられるかわかりません。
毒蛾たちは栗鼠を縛り付けたまま、大家さんの自宅に侵入します。
さらに室内に大家さんの遺体を持ち込み、「自然な死」を演出しようとする一同。
しかし、大家さんは400キロある巨体の女性です。
入浴中の死や自殺などを演出しようとしますが、どれもうまく行きません。
最終的に大家さんの遺体を成り行きで切り刻んでしまい、なんとなく自死した雰囲気が出たということにして、十字目幹部たちは立ち去ります。
最強の肉屋「ストア」登場! アスの力が奪われる
アスは、悪魔チダルマによって地獄に連れ去られてしまいました。
全身をフックで拘束され、身動きが取れなくなったところに、チダルマは肉屋「ストア」を呼びます。
ストアは巨大な鳥のような生き物で、両腕は刃物となっています。
チダルマはアスに「お前は悪魔失格だ。魔法使いに戻るのだ」と宣告、ストアに処理を任せました。
するとストアは奇声を挙げ両腕を振るい、アスの肉体を解体していきます。
ストアはこの悪魔の肉を持ち帰り、自分の店で販売するのです。
悪魔としての力を奪われ、血まみれの体になったアス。
消えていく意識の中で、ニカイドウの身を案じます。
ニカイドウの「心の日記」、そして鳥太の変身が解除!
煙の屋敷では鳥太が相変わらずニカイドウの振りを続けていました。
煙に魔法を見せてほしい、と言われるたびに断る鳥太は、そろそろ断り方にも限界が迫りつつあると感じます。
そんな中、ニカイドウの私室から「わたしのこころの日記」という一冊のノートを発見しました。
鳥太は、ニカイドウのマネをより正確にするために日記を読み始めます。
日記は、ニカイドウが煙に支配されても魔法を使わないように、残されていたものでした。
日記には幼い日のニカイドウ、そして川尻という魔法使い(のちのアス)のことが書かれていました。
そして幼いニカイドウの親友として「八雲」という少女についても記載されていました。
幼いニカイドウは八雲に鍛えられ、魔法は川尻に教えてもらったと書いてあります。
そして、ある日ニカイドウはついにケムリを出すことに成功したのです。
ニカイドウのケムリは、真っ黒なキューブ状の機械を出すもの。
どこを操作しても変化がないので、ニカイドウは自分の魔法は役に立たない、と感じていました。
しかし、その後恐ろしいことが起きたのです。
そこまで読んだ鳥太のもとに、煙が訪ねてきます。
十字目ボスを確実に殺したかを、絶対に確認したくなった煙は無理やりニカイドウの部屋に入ります。
しかしそこにいたのは、ニカイドウの恰好をした鳥太でした!
悪魔でなくなったことで、アスの魔法が解けてしまったのです。
鳥太はニカイドウとトカゲ男はかなり前に逃げたことを煙に告げます。
煙は怒りのあまり鳥太をキノコ化しようとしましたが、鳥太がその瞬間、うっかり煙の「契約書」を破ってしまいました。
煙は突如身体に痛みを感じ、倒れ込みます。
鳥太は慌てて、煙を担ぎ外に出て行ってしまいました。
エビスの「バイバイ、藤田」
煙の騒動でファミリー全員が騒いでいる中、エビスだけがこっそり煙の屋敷から抜け出します。
「ドリームキノコ」によって記憶を取り戻したエビスは、本当の家に帰るのです。
その様子を黙ってみていた藤田は、エビスに声をかけます。
エビスは何も言わず、藤田に最後に「バイバイ、藤田」とだけ言い残し、立ち去ってしまいました。
藤田には何故エビスが立ち去ったのか、わからないままです。
藤田はこっそりエビスの後をつける事にします。
ベリスで迎える、「最後の夜」
十字目組織のアジトがあるという「ベリス」に、カイマン達はようやく到着します。
ベリスの温泉宿で一泊するカイマン達。
カイマンはザガンシティでの記憶からすっかり意気消沈してしまいましたが、宿の食事と地酒でようやくいつもの陽気さを取り戻します。
夏木が寝たあと、カイマンとニカイドウは窓辺で話をします。
ニカイドウは、もし栗鼠に出会い本当の姿と記憶が戻ったら、カイマンはどうするのかと問いかけます。
答えに詰まるカイマンですが、たとえ本当の姿になってもホールに戻ることに変わりはないと宣言。
ニカイドウは、カイマンがもし本当の姿に戻りホールに帰ることが出来たなら、自分の店を手伝ってほしい、と持ち掛けます。
今言わなくてはいけないような気がした、というニカイドウ。
カイマンはこんな自分で良ければ、と快諾します。
こうしてベリスの夜は更けていきました。
そして、これがニカイドウとカイマンの最後の会話となったのです。
感想。「最後の夜」ってなに!?カイマンの記憶が明らかになっていく
「だってこれが、カイマンと私が話した最後の夜だったんだから」と言うニカイドウのモノローグで終わる9巻ですが、リアルタイムで読んでいる時は「どういうこと!!」と心配になりました。
次回、明らかに何かが起きるのですがカイマンとニカイドウはずっと一緒で、物語を構成していくと考えていた自分にとってショックでした。
ちなみに大家さんの自然な死を演出しても、家賃が消えただけで食べるのにはお金が必要な十字目幹部チーム。
実はベリス温泉で給仕の仕事をしています……。
さらに刺繍の内職なども行っているのですから、勤勉さが素晴らしすぎます。
多分煙ファミリーより働いているはずです。
9巻では魔法使いに戻されるアスの姿がショッキングに描かれています。
魔法使いに着ぐるみを着せたように悪魔は存在するのですが、角は抜かれ四肢は切られですから相当な苦痛を伴いそうです。
この処理をあっという間にやってのけるストアは、善でも悪でもない存在と言われています。
それも不気味なのですが、何故か「ナナナナ」という奇声を発したり、歌ったりするのも奇妙すぎてかえってマスコット的な魅力が出ます。
もちろん、ストアの取り扱っている肉は食べたくありませんが。
食べたくない、繋がりですが殺された大家さんは、「ダイエット虫」をお腹に飼っていました。
これは栄養のほとんどを吸い取る虫とされており、ダイエットで悩む全ての人類の羨ましがる虫……ではないかもしれません。
巨大なカブトムシの幼虫のような外観をしており、大家さんから栄養補給が出来なくなったため、最終的には腹部を突き破ってしまうのです。
それを見た十字目幹部たちは全員恐怖し、大家さんと虫をバラバラにしてしまったわけですが、これはひどい話です。
「ドロヘドロ」はこういうグロテスクな部分とギャグの組み合わせが多く、個人的にはこういったセンスが好きなのですが、少しだけ読む人を選びそうな気がします。