ビッグコミックスピリッツ系雑誌で連載された、林田球・作「ドロヘドロ」8巻の紹介です。
記憶喪失のトカゲ男・カイマンが自分の本当の姿を探すために魔法の世界を旅するダークファンタジーとなっています。
個性的なキャラクターと世界設定が魅力です。
前回の話:ドロヘドロ【7巻】のネタバレと感想。パイマンがひどいと評判。
ドロヘドロ【8巻】のあらすじとネタバレ
【ヒドラの森で激戦!カイマン、マステマの町へ】
立ち上がった心は捕らわれた能井を助けるため、十字目の家に向かいます。
カスカベ博士もそれに同行することに。
十字目のメンバーたちは、巨大な像に向かい祈りを捧げています。
ヒドラの森、十字目の男たちの最期
『ボスが考え出した魔法を使えるようになる手術、その副産物としての「黒い粉」、どちらも私たちはマネ出来ませんでした。そして、あなたのようになろうとした手術は、私たちを化物に変えただけでした……』
ここの十字目組織のメンバーが行っていたのは、「黒い粉」の生産だったのです。
さらに、魔法が使えるようになる手術も行っていました。
しかし、それらは失敗して他の十字目のメンバーのように化物のような姿を生み出しただけでした。
彼らは能井を「部分(パーツ)」として、像に捧げようとします。
しかし、能井が自らの魔法で意識を回復させ、その場にいた十字目のメンバーを殴り殺します。
その中にひとりだけ、体を妙に巨大化させているメンバーがいました。
その存在に気を取られながらも、能井は「ボス」として崇められていた像にかけられているベールを取ろうとします。
同じ頃、心とカスカベ博士が家に侵入します。
心の体力には限界が訪れていました。
しかし、その瞬間、向かい側の窓に能井が叩きのめされる姿が映ります。
急いで現場に入った心が見たものは、巨大化した十字目の男が能井の頭部に食らいついている様子でした!
怒った心は、そのままハンマーで十字目の男の頭部を殴りつけ、能井を救出します。
カスカベ博士が注目したのは、巨大化した十字目の背後にある祭壇でした。
しかし、巨大化した十字目がダメージを受けて倒れ、家にあった蝋燭から周囲に火が付きます。
家全体に炎が回り、あらゆるものが焼き尽くされていきます。
途中、カスカベ博士が目にしたものは、溶けかかる祭壇の上の像。
それは、蝋人形の十字目の「ボス」でした。
その顔はカスカベ博士の見覚えのあるものだったのです!
体力が尽きた博士は、そこで倒れ込みます。
博士を「ヘイズ」と呼ぶ声で、カスカベ博士は目覚めました。
博士の体は悪魔に抱きかかえられていたのです。
夫を起こすのも久しぶりだ、と言う悪魔。
カスカベ博士は、悪魔が自分の妻である「ハル」と気づきます。
ハルは長年の夢だった悪魔試験を諦められず、魔法使いの世界に戻り、試験を受けたところ見事合格。
悪魔の姿になったハルは、ホールに戻ることも出来なかったと博士に謝ります。
カスカベ博士は、ハルの腕輪を渡しながら生きていてくれてよかった、と安堵しました。
十字目の森の家は灰になり、心と能井やバウクス、サーティーン等も結果的に全員助かることとなりました。
カイマンとニカイドウが辿り着いたのは「マステマ」の町!
カイマンとニカイドウは、まず現在の町がどこなのかを調べます。
地下鉄駅のような場所の入り口に「マステマ」と記載があったことから、ここがマステマの町であることをふたりは理解し、地下へ降りていきます。
マステマの町は、煙が十字目のボスと戦いを挑み、キノコだらけにした街です。
地下にはまだ人が住んでおり、わずかながら地下街も存在していました。
衣類と武器を探すふたり。そんなふたりの後をつける影がありました。
ふたりはすぐにその存在に気づき、影を締め上げます。
影の正体は少女でした。
少女は十字目の新人であり、「夏木」と名乗ります。
カイマンの十字目を見て、仲間だと思い接触してきたのです。
カイマン達は彼女に話を合わせ、町を案内してもらうことにしました。
夏木はまず彼らを質屋に案内し、無事カイマンとニカイドウは衣服と武器を手に入れます。
夏木が言う十字目のボスは、魔法が使えない者の救世主だと語ります。
魔法が使えなければ、この世界で生きていけない。
そんな夏木たちを助けてくれた、と。
それが「黒い粉」だというのです。
夏木はマステマの町の「黒い粉」の取引を牛耳る「牧」という男のもとで働いていました。
カイマン達を案内中、牧に呼ばれた夏木は席を外します。
牧は偽物の「黒い粉」を仕入れ、これを売りさばくよう夏木に命じました。
しかし、夏木はこれに猛反対。
牧は夏木を殴り、「黒い粉」は金稼ぎの手段に過ぎないと言います。
それを見ていたカイマンは、牧に話しかけて夏木を助けました。
牧は仕事を邪魔する者として、カイマンを殺そうとしますが、夏木の助力もあり、反対にカイマンにあっさり殺されてしまいました。
こうしてカイマンとニカイドウは、夏木の自宅に案内されます。
夏木はカイマンを「兄貴」と呼び、十字目の先輩として慕うようになっていました。
ベリスまで行きたいというカイマンに同行する夏木は、ニカイドウにはヒミツとして本物の「黒い粉」をカイマンに渡します。
十字目の組織の一員ならば、全員が使用しているものです。
カイマンは複雑な心境でそれを受け取ります。
ベリスに行くには、まず「ザガンシティ」にまで行く必要があるという夏木のアドバイスに従い、3人はバスで「ザガンシティ」を目指すことになりました。
十字目幹部の極貧生活、そして栗鼠の思い出
栗鼠を一室に向かい入れた十字目組織。
幹部である毒蛾のもとに、「黒い粉」製造を担当する「研人」から連絡が入ります。
毒蛾ともう一人の幹部である鉄条は、ヒドラの森の「製造所」に足を運びますが、そこはすでに灰になり巨大化した研人が遺体として転がっていました。
これで、十字目組織の資金源であった「黒い粉」やその他のものは全て消失したことになります。
「ベリス」の十字目組織の家は、実は借家です。
大家さんが来て、家賃の支払いを迫ります。
お金がないメンバーは、大家さんが大層気に入っている牛島田というメンバーを差し出し、何とか時間を稼いでいました。
そこに帰ってきた鉄条が現れます。
鉄条からは資金はない、と宣告されて絶望する十字目幹部たち。
彼らを見て、牛島田は自分が大家さんのもとに行く、その代わりこの家を大家さんから貰おうと提案します。
戻った毒蛾は、栗鼠が目覚め家探ししている現場を突き止めます。
栗鼠は、何故自分が死んだのかを毒蛾に問い詰めますが、毒蛾は答えず、栗鼠は十字目組織が自分を殺したと考えます。
毒蛾はナイフを抜き、栗鼠とついに戦うことに。
毒蛾は自分の唾液が「毒」であるため、栗鼠の目にそれを塗り付けます。
視界を封じられた栗鼠は、そのまま毒蛾によって捕獲されました。
しかし、この戦闘の際に毒蛾の放った一本のナイフが、窓を突き破ります。
そして牛島田と腕を組み、嬉しそうな大家さんの頭にナイフは見事に刺さってしまいました。
ひょんなことから牛島田は助かったものの、大家さんを殺してしまった毒蛾たち。
権利書もすでに大家さんから貰っていたため、家が手にはいったことを喜ぶのでした……。
天井に縛り上げられた栗鼠。
栗鼠は毒蛾が自分を「殺さない」のはなく、「殺せない」のだと気が付きます。
さらに栗鼠は、このことから何故自分が殺されたのか、誰に殺されたのかまで把握していました。
栗鼠は十字目組織に入った頃を回想します。
栗鼠は魔法使いでありながら、ケムリが一切出ない体質でした。
そのため、ケムリを出せない魔法使いの味方である十字目組織に自ら入会します。
魔法使いの死体を回収し、トラックでどこかに運ぶ。
これが十字目組織のメンバーの仕事でした。
「黒い粉」でも魔法が使えない栗鼠は金を集め、魔法専門学校に通います。
専門学校に入った栗鼠は、「会川」という親友を得ます。
「会川」は教師に恐喝されかかった栗鼠を助けてくれたのです。
回想が途切れ、十字目組織たちが栗鼠のもとに集まります。
毒蛾は栗鼠に関する何かを確実に知っているのです。
煙の奇妙な発明、そしてアスの悲劇
煙は藤田、エビス、ニカイドウ(である鳥太)に、肉の寿司を振る舞います。
実はこの肉、「ドリームマシン」という煙の開発した新種のキノコでした。
「己の望むまま夢を見ることが出来る」というドリームマシンは複数人で食べることで、互いの夢を共有することも可能です。
藤田はさっそく、ニカイドウとカイマンを自分が倒し、魔法使いたちから尊敬されるという夢を見ます。
エビスは明らかに巨乳化し、鳥太は一旦変身が解除されてしまったため、再びニカイドウの姿に変化します。
しかし「ドリームマシン」には、大きな欠点がありました。
無意識化のトラウマも「ドリームマシン」は再現するのです。
煙は仲間全員にドライヤーでキノコを乾かされ、藤田も仲間に捨てられる夢を見ます。
巨乳化したエビスは、もうひとりの自分を見つけます。
エビスの普段着とは明らかに違う、女の子らしい衣服を身につけたエビスは大きな屋敷に入っていきました。
そこで、エビスは失っていた記憶を取り戻します。
お屋敷のお嬢様、それがエビスの本当の姿だったのです。
「ドリームマシン」は危険性がある、として煙は発売を諦めます。
一方、悪魔であるアスは、悪魔の頂点に立つチダルマに呼び出しを受けます。
「地獄」へ降りていくエレベーター内で、チダルマはアスが自分たちに秘密を持ったことを責めます。
「元から悪魔であるお前にはわからないだろう」アスはそう答え、罪を認めました。
チダルマはアスを、悪魔から「魔法使い」に戻すことにします。
感想。8巻のおまけマンガに「ギョーザ男」が登場!
【十字目幹部の貧乏生活が悲しい!そして8巻はぜひ単行本を!】
十字目幹部が貧困生活を送っているのは、資金源である「黒い粉」が製造できなくなったからでした。
それにしても、魔法が使えない彼らですから何せお金を稼ぐ手段がありません。
煙ファミリーには終われる身ですから、内職をしたり古新聞の交換をしたりして、糊口をしのいでいます。
これが「幹部」の生活なのかと、哀れにもなります。
十字目幹部メンバーは、毒蛾が「女性のような」美しさを持つ他は、普通の男性です。
特に牛島田と佐治、豚(トン)あたりは全く女子人気を得ようとしていない風貌が、かえって好感を持たせます。
それぞれ特技があり、お互いのためなら努力を惜しまないのは素敵な部分です。
今後彼らの生活はどうなっていくのでしょう……。
新登場メンバー夏木は、とても明るい少女です。
カイマンとニカイドウの仲を疑うこともありますが、将来の夢は「ボスの女になること」という、可愛らしいところもあります。
「ドロヘドロ」に登場する女性の中では最も普通、と言われている彼女なので、かえって珍しい存在といえるかもしれません。
いよいよエビスは自分の本当の居場所を思い出します。
しかし、彼女はすでにキクラゲとは親友、藤田とは仲良し、ファミリーの一員です。
ギャグ担当としても外せないメンバーですが、これからエビスはどこに行くのでしょう。
さて、8巻はぜひ一度手にとってもらいたい単行本です。
実はおまけマンガに、「ドロヘドロ」のマスコットキャラクター的存在の「ギョーザ男」が登場します!
「空腹虫」に住むギョーザの精で、ギョーザを美味しく食べてもらうことが使命です。
マナーにうるさくテレビを見ながらまかないを食べるニカイドウの頭につまようじを刺したり、アグレッシブな活動をしています。
アニメではこの妖精を、「ONE PIECE」ブルック約のチョーさんが演じます。
最高の配役なので、期待出来ますね。