ビッグコミックスピリッツ系列雑誌で連載されていた林田球・作「ドロヘドロ」4巻の紹介です。
記憶喪失で頭部がトカゲ化した男・カイマンが自分の本当の姿を取り戻すまでを描いたダークファンタジーです。
独特の世界観や個性的すぎるキャラクターが人気となっています。
前回の話:ドロヘドロ【3巻】のネタバレと感想。ニカイドウの魔法の正体は?
ドロヘドロ【4巻】のあらすじとネタバレ
【突然の球宴開催!エビスの魔法も明らかに】
カイマンとニカイドウは無事、ホールの世界に戻りニカイドウの背中から巨大キノコが取り除かれました。
手術を行ったカスカベ博士とバウクス先生の会話から、魔法使いの心は以前ホールの住人であったことがわかります。
相棒の仇が取れない藤田は、自らホールに赴きカイマンを殺そうとしますが、何故かエビスも同行。
しかも勝負は野球となってしまい、ますます行方がわからないことに。
「掃除屋」心の過去、そしてニカイドウ危機一髪
ホール戻ったカイマンとニカイドウは、病院へ。
煙の魔法によって生えたキノコを、ニカイドウの背中から切り離す手術をカスカベ博士とバウクス先生が行います。
無事手術が終わったときに、カスカベ博士とバウクス先生は心の話をします。
リビングデッドデイの時に、心がホールにやってきたことをバウクス先生は知っていたのです。
昔、心はホールの人間でした。
母親が魔法使い、父親は人間という両親を持ち、魔法使いが嫌われるホールで母親は殺されてしまったのです。
身を隠すように父とふたりで暮らしていた心ですが、ふとしたことから心が魔法使いであることが発覚、心の父は殺され、心自身も町内会から激しい暴力を受けます。
バウクス先生とカスカベ博士は、心が病院で自分の腕を切断しているところを偶然発見したのです。
魔法使いの管を出せた心は、町内会の人間をバラバラにしたあと、魔法使いの世界へ旅立ちました。
その後、魔法被害者病棟から患者が減少するという奇妙な現象が起こります。
ニカイドウは病棟で治療を受けながらも、何者かが自分を見ていると感じます。
しかし、あいにくの雨のため力を出すことは出来ません。
その夜、カイマンはニカイドウの悲鳴を聞き、彼女をさらった影を追跡します。
追跡した先はマンホールの下に通じており、そこにはたくさんの死体が浮かんでいたのです。
魔法被害者の死体です。
しかもそこに出現したのは人間の背丈ほどある巨大なゴキブリでした。(以下、ジョンソンとします)
カイマンはジョンソンの意識が他に向いている隙に、より奥に進みます。
そこには失神したニカイドウと、ホールの男がいました。
ホールの男はジョンソンを操り、魔法被害者から黒い物質を集め、それを使う事で自分も魔法使いになれる、と信じていたのです。
犯人はカイマンによって殺されましたが、死ぬ直前に「お前を見たことがある、この女もあの路地裏にいた」とカイマンに告げました。
路地裏にいたのは、本当に誰なのか。
わからないまま雨の中をカイマンとニカイドウは帰ります。
藤田、「夢の球宴」にてリベンジ開始!?
煙は魔法屋のケムリから「恵比寿の魔法」の瓶を発見します。
心・能井には先日の騒動の際に逃亡した栗鼠を追跡するように命じ、「恵比寿の魔法」を確かめようとする煙。
藤田は、煙の力を借りず単身ホールに乗り込み、カイマン殺害を企てます。
ホールに向かった藤田でしたが、なぜかエビスも同行してしまい、一緒にホールの町を歩くことになります。
ふたりの目に飛び込んできたものは、「平和シャークス投手募集」のチラシ。
これでカイマンに近づこうと考えた藤田は早速入団します。
ちなみに、エビスはマスコットキャラクターとしてぬいぐるみをかぶることに。
「平和シャークス」は「中央ワームズ」との試合を控えており、「中央ワームズ」こそ、カイマンが所属している野球チームなのでした。
ニカイドウに色目を使う「空腹虫」常連サーティーンに腹を立てるカイマンは、藤田の企みを知らず試合当日を迎えます。
「中央ワームズ」はバウクス先生率いるチームで、もちろんニカイドウやサーティーン、カスカベ博士やジョンソンも参加しています。
しかし、実はサードが前日になっても用意できなかったのです。
しかし、試合当日「中央ワームズ」の攻撃の際、選手はやってきました!
それは、カスカベ博士が仕上げた藤田の死んだ相棒・松村だったのです!
松村を救出できるか? 一方、能井が大変なことに
魔法使いの煙・屋敷では、エビスのケムリの研究が行われていました。
しかし、エビスのケムリがひょんなことから能井に降りかかってしまいます。
能井は途端に巨大なトカゲ怪人と変貌し、部下たちを襲い始めたのです。
心は、能井を止めようとしますが能井自身の制御が効かないほどケムリの威力は強いものでした。
心は怪物化した能井に脇腹をやられながらも、能井の首に腕を貫通させ動きを封じることに成功。
まずは動きを封じ込めることに成功しました。
ホールでは松村を発見した藤田が、今回はカイマンを殺すのではなく、松村を連れてキクラゲに復活の魔法をかけてもらおうと考えます。
投手の藤田はせめて、憎きカイマンを三振に追い込もうとしますが、あえなく失敗。
しかも「中央ワームズ」はジョンソンを操り、1塁から3塁への盗塁まで行います。
エビスのアドバイスで自分の魔法で球速に勢いをつけた藤田ですが、その球すらニカイドウに打たれる始末。
最終的に「平和シャークス」の監督に球が当たり、試合はノーゲームに。
藤田はエビスとゾンビ松村を連れてドアに入ります。
ドアを開けると、そこは煙の屋敷でしたが部下たちが誰もいません。
全員能井の防衛に行ってしまったからです。
その時突然、ゾンビ松村が藤田をつかみ、投げ飛ばしました。
ゾンビ松村はさらに、エビスにまで手をかけます。
カスカベ博士によって復活した松村は30分に一度、頭部に電流を流さなければ暴走するという仕組みになっていたのです。
あまりの恐怖から、エビスはケムリを腕から放出します。
するとエビスは変身し、姿をトカゲに変えたのです。
トカゲとなったエビスの力は強く、ゾンビ松村の肉体を千切り、頭部は潰してしまいます。
藤田が慌てている最中に、エビスの変身は解除され、同時に彼女の記憶が思い出されました。
煙に恋する魔法使い、鳥太登場
トカゲ化した能井を元の姿に戻すため、煙はとある塔の魔法使いに会いに行く、と心を連れ出します。
その塔には鳥太(チョウタ)という魔法使いが閉じ込められていました。
鳥太は煙を一方的に愛しており、そのしつこさに煙が辟易していたため、鳥太を閉じ込めていたのです。
能井の怪我を見た鳥太は、早速「魔法を解く魔法」を能井にかけ、能井は無事に復活を果たしました。
その後、藤田・エビスと合流した煙は、エビスが思い出したことを尋ねます。
エビスはカイマンの「口の中の男」から「お前は、俺のジャマをした」と宣告されていたのです。
さらに鳥太からは、エビスの魔法について説明がありました。
エビスは幼少期から黒い粉を常用しており、そのためエビス以外の人間がトカゲ化する魔法を使うと暴走してしまうのです。
そこで、粉々になった松村をキクラゲに差し出す藤田。
しかしもはや肉片としか認識されず、松村復活計画は頓挫してしまったのでした。
カイマン、いい日旅立ち
無事に騒動から逃れた栗鼠は、義体を使って自宅に戻ります。
アパートの栗鼠の部屋はすっかり古びており、栗鼠自身が何年間殺されていたのかわからないほどです。
栗鼠は出来るだけ正確に殺された時を思い出そうとします。
栗鼠の記憶は「十字目の部長から取引のため、「黒い粉」を運ぶように指示され、サルマナザ平原に向かった。」
「途中、会川から十字目組織は信用できないから気をつけろと言われた」
「サルマナザ平原の遺跡で、自分は十字目の何者かに殺された」という事実が残っていました。
肝心の犯人は十字目の何者かであることしかわからず、しかも義体のエネルギーである魔法のケムリはすでに半分以下となっていました。
栗鼠は思い出します。
自分のパートナーだった「会川」なら、自分を絶対に助けてくれると。
ホールのカイマンは、突然「栗鼠」という名前と顔を思い出したことを考えていました。
より長く魔法使いの町にいれば思い出すことも増えるだろう、とカイマンは考え、同時にニカイドウをこれ以上危険な目に遭わせることが出来ないと決意します。
ニカイドウは後日、カイマンへの差し入れを持って病棟に訪れます。
しかし、そこにカイマンはおらず、バウクス先生からはカイマンが仕事を突然辞めたと聞かされます。
嫌な予感がしたニカイドウは、カスカベ博士のもとへ急ぎました。
カスカベ博士は昨晩、カイマンがやってきてドアを使いたいと聞いた、とニカイドウに伝えました。
ニカイドウはそこでようやく、カイマンが自分を残して魔法使いの町に行ってしまったことを知ったのです。
感想。レアな野球編!作者の林田球は阪神ファンらしい
【またも個性の強い魔法使いが!そして栗鼠は何者?】
鳥太の魔法は「魔法を解く」魔法で、これも貴重な魔法のひとつです。
ただケムリをかければ成立するものではなく、魔法をかけられた人の大切な人の臓物が必要とならいます。
実はここで、能井の大事な人が煙なのか心なのか少しモメますが、たまたま心が脇腹から腸を出していたので(!)、能井には心の一部が使用されました。
さらに心には「魔法を解きたい人との最高の思い出」を思い浮かべる必要があり、心は能井と一緒に仕事をして崖から落ちたことを思い浮かべます。
これで能井が復活したのです。
このエピソードからも「ドロヘドロ」の混沌ぶりの凄まじさがわかるでしょう。
鳥太は重要なキャラクターで、今後はほぼレギュラーとして登場します。
栗鼠については、義体に秘密があります。
首から下がない状態の栗鼠は、煙の魔法のケムリで動く義体が与えられています。
しかもGPS付きなので、実は栗鼠の居場所はファミリーに筒抜けです。
さらに、義体を動かしている魔法のケムリが少なくなってきています。
ケムリが無くなれば義体は停止してしまうのです。
そのため、栗鼠は急いでパートナーである会川という男を探そうとしているのです。
しかしトカゲ頭の男、カイマンという単語にはさっぱり反応しませんから、この時点では何の繋がりも見られません。
「野球編」については、まさかのアニメ化で非常に好評でした。
作者の林田球は阪神ファンらしく、ポジションにもこだわりがあるそうです。
本筋にはあまり関係しない部分ですが、あまりにも素早いジョンソンをやっつけるため、エビスはホイホイの煙を焚こうとします。
そこをジョンソンに見つかり、エビスは追いかけまわされた挙句、ようやくドアで逃げたらゾンビ松村に殺されそうになる、というかなりのコメディリリーフとして活躍しています。
エビス人気があるのはこうしたところで案外活躍し、可愛いからです。
今後もますますエビスはおかしな方向に向かいます。
カイマンが単身で魔法使いの世界に向かったときには、「ニカイドウ追わないの?」という声が聞かれました。
追いかけるのはもう少し後になります。
「ドロヘドロ」のカイマンとニカイドウ、心と能井のような組み合わせは良いコンビではありますが、男女の感情というより、戦友だったり仲間だったりする部分が強調されています。
サーティーンが直接カイマンに「ニカイドウとアンタはどういう関係なんですか」と聞いたとき、カイマンは友達だと答えますが、こういうさっぱりとした関係のまま続きます。
「ドロヘドロ」のラブシーンというのも、おそらく普通ではなさそうな気がしますし、ちょっと怖い気がしますね。