ビッグコミックスピリッツ系雑誌で連載された、林田球・作「ドロヘドロ」18巻の紹介です。
主人公のトカゲ頭の男・カイマンが自分の本当の姿を探し旅を続けるダークファンタジーとして知られています。
個性的な登場人物、複雑な伏線や世界設定などが魅力です。
前回の話:ドロヘドロ【17巻】のネタバレと感想。豚と夏木の最期が泣ける。
ドロヘドロ【18巻】のあらすじとネタバレ
中央デパート屋上に乗り付ける予定だった煙ファミリーですが、キクラゲとエビス、そして煙の遺体は失踪してしまいます。
さらに、まとめ役だったはずの消が着地の際に頭部を強打した結果、死亡してしまいます。
そして中央デパートの異変により、屋上にいたはずの彼らは何故か屋内に移動させられてしまいました。
そんな中、能井はキクラゲを探しに単独行動をとります。
回復・修復を担う能井を今失うわけにはいかない。そう考えた心は能井を追いかけます。
能井を優しく抱きしめた心は、「お前を失うわけにはいかねえんだよ」と言うと自分のケムリを能井の頭部にかけます。
輪切りになった能井の頭部に、心はすかさず消からもらった悪魔のケムリ瓶を詰め込みました。
能井は自動回復しますから、これで問題ないはずです。
その場を立ち去ろうとした心は、廊下の奥から黒ずくめの人物がやってくるのを目撃します。
心、過去に遭遇する。しかし……
黒ずくめの人物を目撃した心は、いつの間にか別の場所に倒れていました。
足には長いチューブが突き刺さっています。
チューブの先をたどると、そこには扉がありました。
心は大きな体を曲げながら、さらに最奥までチューブを追跡します。
扉の奥先、そこには町内会の男たちに殺された、心の父親の姿がありました。
親父……と呟いた瞬間、心はさらに別の場所に飛ばされます。
周辺には心と同じように、チューブが刺さった人間がたくさん存在していました。
身の危険を感じた心は、チューブを抜こうとします。
しかしチューブは頑丈で、心の力でも抜く事が出来ません。
奥にはあの黒ずくめの男が見えます。
チューブはついに心の足元から内臓に入り、心臓にまで達しました。
さらにチューブからは謎の黒いドロが注入され、心は口からドロと血を吐き出します。
ドロが心の体に行き渡ると、心は別人の存在へと変貌を遂げました。
別の邪悪な存在が、心を乗っ取ったのです。
キクラゲとエビスは無事!思いがけない召使「カイコ」も登場!
中央デパート周辺の強風にあおられて魔法のジュータンから落下したエビス、キクラゲ。
エビスはどこかのトンネル内で目を覚まします。
煙の遺体を入れたバッグが下敷きとなり、エビスの命を救ったのです。
エビスはキクラゲを探し、無事キクラゲを確保します。
キクラゲのそばには能井から託された、回復用のケムリの入ったカバンがありました。
エビスは自分の折れた腕を治療し、全回復します。
エビスとキクラゲが周囲を見渡すと、十字目幹部・毒蛾の入ったゴミ袋が見つかります。
エビスの力では煙の遺体バッグを運ぶことは出来ず、ちょうど力のある人物が必要でした。
しかも毒蛾は、落下の衝撃のためか何も思い出せないとつぶやいています。
毒蛾はちょうど記憶喪失に陥っていたのです。
エビスは毒蛾の体を治療し、利用することにしました。
さらに毒蛾には、偽の情報を与えます。
毒蛾はエビスの召使い「カイコ」と呼ばれ、エビスの命令には絶対に従うように命じられました。
承諾した毒蛾は、能井のケムリにより体を回復させます。
ありがとうございますお嬢様!と毒蛾ことカイコは大喜び。
エビスはカイコに煙のボディバッグを持たせ、トンネルの出口を探します。
アスの目が!指が!中央デパートがニカイドウ達を襲う
大量ギョーザ弁当を売り終わった3人は、デパートを出ようとします。
アスは自分の移動能力と千里眼を発動しました。
しかし、アスの魔法はデパートの黒い壁にさえぎられてしまいます。
場所を移動することも叶わず、アスの目は潰され外に出ることは失敗してしまいました。
驚くニカイドウとアス。
ニカイドウは先ほどの停電で、周囲の店の人々がデパートによって空中に吊り上げられていったのを見た、と言います。
中央デパートで何か良くないことが起きているのです。
さらに栗鼠は周囲から強い殺気を感じると、「カース」に変身します。
それならば、とアスは指のケムリから魔法使いのドアを出そうとします。
ところがその時、天井からナイフをもった男がアスを襲い、指を切り落としてしまいました!
眼と手を失ったアスは狼狽し、魔法が使えなくなります。
ニカイドウとアスは、気が付くとチューブが刺さったゾンビたちに取り囲まれていました。
何とか脱出するために、ニカイドウと「カース」はゾンビを蹴散らします。
しかし天井から巨大なチューブが伸びてきて、ニカイドウ、アス、「カース」もまた全員天井につるし上げられてしまったのです。
悪魔であるニカイドウは強い力でチューブを引きちぎります。
しかし栗鼠とアスは力が弱く、そのまま天井に引き上げられそうになってしまいます。
栗鼠はそのまま天井に連れ去られ、見えなくなってしまいます。
残ったアスの手をニカイドウは離そうとせず、なんとか地上に降ろそうとしました。
しかしアスは無理だと悟り、ニカイドウにまだ渡していなかった、悪魔の手作りマスクを手渡します。
アスはもう悪魔ではありません。
そのため、友人の悪魔に依頼しニカイドウ用の魔法使いマスクを作ってもらっていたのでした。
マスクを渡したアスは、そのままチューブに攫われてしまいます。
栗鼠、そしてアスまでもデパートのチューブに捕らわれてしまい、ニカイドウは必ずふたりを助けると誓います。
チューブを辿っていけば、必ず彼らの居場所がわかるはずと考えたニカイドウは、ひとりでデパート内を進み始めました。
藤田、鉄条と取引をする
消が死んだことで魔法の力が消えた藤田は、鉄条に見つかってしまいます。
藤田は何とかその場をしのぐために、鉄条に交渉を持ちかけました。
手を貸してくれたら、死んだ佐治と牛島田をキクラゲの魔法で復活させる。
これが藤田の持ち掛けた提案です。
鉄条は藤田にそれほどの力があるかを疑いますが、他にふたりを復活させる手立てがないことから、提案を受け入れました。
さらに藤田は毒蛾が、八坂たちの襲撃を受けたことを教えます。
鉄条は、その話からボスの背中に大量の腫瘍や首が、彼らのものであったことを理解しました。
鉄条はそこから、毒蛾は今も生きている可能性があると考え、藤田に毒蛾捜索を手伝うよう強制します。
藤田に佐治の生首を持たせ、その動きを慎重に観察する鉄条。
ふと、藤田の動きがやけにこわばっていることに気が付きます。
恐らく、何らかの大切な物体を持っているに違いない……。
鉄条はそう考えました。
鉄条はすかさず藤田のポケットを刀で切り裂き、中の物体を奪いました!
慌てた藤田ですが、鉄条から取り戻すことは出来ません。
鉄条は中身を確認し、それがひとつの悪魔腫瘍であること、そしてこれが煙自身の悪魔腫瘍であることを察知します。
煙に復活されては、十字目組織はひとたまりもありません。
今度は鉄条が、煙の悪魔腫瘍を潰さない代わりに藤田が鉄条に手を貸すよう、命じます。
その場にちょうど、大男がやってきました。
足にチューブを絡めた男、煙ファミリーの心です!
藤田は心の登場を喜び、鉄条は「掃除屋」の到来に驚きます。
鉄条はとっさに、それ以上近づけば、煙の悪魔腫瘍を潰すと心に脅しをかけます。
ですが、心は一切聞き入れません。
鉄条は交渉を諦め、藤田に悪魔腫瘍を渡してしまいます。
藤田は受け取った悪魔腫瘍を心に見せようと、心のそばに近寄ります。
一言も言葉を発さない心に不安を覚えますが、再会の喜びに浸る藤田はそれほど不審に思いませんでした。
そして心は、藤田に手をかけます。
その瞬間、心の魔法が発動しました!
さらに鉄条も心のケムリによって、バラバラにされてしまったのです。
心、煙ファミリー幹部を全員「掃除」!
鳥太やターキーは消の遺体を囲み、心と能井の帰還を待っていました。
そこにようやく心が到着します。
心の服がないこと、そしてパートナーである能井がそばにいないことに驚くふたり。
心は黙ったまま、ふたりに自分の魔法を発動します。
一方、意識を取り戻した能井は強引な手術に文句を言いながらも心を探します。
しかし戻る道すがら、あらゆる部位の遺体が転がっていることに気がつきました。
普段の心の出来とは思えない、雑な仕事の散らばった遺体。
能井はゴミ袋にひとつひとつパーツを集めながら、心を探します。
ところが、能井はある手のひらを拾った時に気づいてしまったのです。
能井が拾った手には、黒いゴムの蓋がされていました。
これは鳥太の手です。
どういうわけか、心は鳥太を解体したのです。
能井は今まで拾った部分を見て、ひとりではなく複数の相手が心によってバラバラにされていることを知ります。
突然、能井の横をケムリが通り過ぎました。
能井の反射神経の良さで避けたものの、それが心の魔法であることに驚きます。
心の魔法を十字目に奪われたのでは、と心配する能井ですが、無事そこに心の姿を発見します。
しかし心はすでにいつもの心ではありませんでした。
能井に向かって次々とケムリを使う心。
能井は心が正気を失っていることに気づき、まずはこのケムリを止めようと決心します。
能井はすかさず心の腕を切り落とし、ケムリを止めました。
よっしゃ!と能井がガッツポーズを決めた途端、心のもう片方の腕のハンマーがうなりをあげ、能井の頭部に強く刺さります。
能井の顔面に血が飛び散りました。
能井はやられ、その場に倒れてしまいます。
カスカベ博士、悪魔の体内に入る
ホールの病院では、煙ファミリーの部下たちがホールのテレビにくぎ付けです。
そしてテレビには、面白い情報が流れました。
「中央デパートが消えた」。
消の魔法だと言うファミリーの手下ですが、カスカベ博士は真実を確かめるためジョンソンに乗って(ジョンソンは飛行可能です!)中央デパートに向かいます。
現場に辿り着いたカスカベ博士が見たものは、予想外のものでした。
そこに中央デパートはなく、廃物湖だけが広がっていたのです!
その時強風が吹き付け、カスカベ博士はジョンソンから引きはがされてしまいました。
博士はかろうじて、真っ黒な家の屋根につかまります。
この家は空中に浮かんでおり、家そのものに体温があるかのように温かみがありました。
不思議に思いながらも飛ばされることを回避するため、博士はドアから家の中に入ります。
そこには何故かソファでくつろぐハルの姿が!
ハルは博士を見つけると、すかさず自分の体の中に隠してしまいます。
悪魔仲間に見つかると大変だとハルは言い、カスカベ博士は初めて入った悪魔の体に興味津々です。
やがてチダルマが家に現れ、悪魔たち全員が家に集合します。
一体これから何があるのか。
ハルは中央デパートの「あるもの」に会いに行くと言います。
家は静かに湖の中に沈んでいきました……。
突然出現したカイマン!ニカイドウとの再会
ひとりになったニカイドウは、しばらくして悪魔のテンションから普段の意識に戻りました。
ニカイドウはまず衣類を着替えようと、更衣室に入ります。
返り血を浴びた衣類を変え、カイマンから預かったジャケットを着用するニカイドウ。
ふと視線を上げると、悪魔のようなシッポが影から揺れています。
悪魔がいる!
と考えたニカイドウはとっさにシッポを追跡します。
シッポはあちこちに現れ、どこかに誘っているかのようです。
ニカイドウがシッポを追跡し、広い場所に出るとそこにはトカゲ頭の大男が座っていました。
「よォ、ニカイドウ」
男は間違いなく、ニカイドウの知るあのカイマンだったのです!!
感想。魔のおまけ:チダルマ先生の死後講座がおもしろい!
18巻ラストは懐かしいあのカイマンの姿で終わりです。
正直言ってここで何故カイマンが出てくるのか、全く!全くわからなかったです。
もちろん漫画ではきちんと理由が明らかになりますが、ここでは全く謎が明らかにされていないので、びっくりしました。
しかもニカイドウを知っているカイマン、トカゲのカイマンは数巻ぶりの登場です。懐かしすぎます。
中央デパートもどうやら何かあるようです。
心がおかしくなってしまったため、ファミリーはほぼ全滅というつらい目に遭ってしまいます。
もしかして心が最強なのでは……と思ったりしますが、煙がまだいないので頂上は不明ですね。
毒蛾は記憶喪失、そのままカイコとしてエビスにこき使われています。
しかし十字目の幹部をやっているときより笑顔ですし、明るいのです。
エビスにも常に気遣いを欠かさず、口調も丁寧……。
毒蛾、幸せかもしれませんね。
ちなみに18巻は「魔のおまけ」が充実しています!
チダルマ先生による「死後講座」が掲載されているのです。
煙はもちろん、これまで死んでいった十字目幹部などが登場し、地獄めぐりをします。
生前のヒエラルキーは全て崩壊しているそうで、煙は激しく十字目たちにいじめられてたりします。
天国はないのですね。
十字目幹部たち、ちょっとかわいそうだと思うのですが……。