ビッグコミックスピリッツ系雑誌で連載された、林田球・作「ドロヘドロ」11巻のネタバレと感想の紹介です。
記憶喪失でトカゲ頭のカイマンが、自分の本当の姿を探すために旅に出るダークファンタジーで、個性的な登場人物や複雑な伏線、世界設定などが魅力の作品です。
前回の話:ドロヘドロ【10巻】のネタバレと感想。まさかのカイマンとエビスが死亡。
ドロヘドロ【11巻】のあらすじとネタバレ
【そして煙が死んだ…混乱する魔法使いの世界】
煙屋敷に再び捕らわれたニカイドウ。
彼女自身の契約を拒否する気持ちが強すぎるため、ニカイドウの体内にある悪魔の契約書が腐り、能井の回復魔法を受け付けなくなります。
一方、魔法使いに戻されたアスは、会川という男に助けられニカイドウのもとへ。
煙は十字目のボスを殺した確信が持てず、ついにニカイドウのもとへ急ぐのですが……。
栗鼠が出会った自分の魔法、「呪い(カース)」
拘束された栗鼠を見守る人影は、もうひとりの「栗鼠」でした。
カイマン死亡と共に抜け出した「栗鼠の亡霊」は、生きている栗鼠の中に侵蝕します。
そして栗鼠は思い出したのでした。
自分の魔法「呪い(カース)」のことを。
夏木を十字目幹部のメンバーに加えた一行が、アジトに戻るとそこには「カース」という怪物の姿を身にまとった栗鼠と遭遇します。
毒蛾は他のメンバーに、「カース」に攻撃をしないように言いますが、メンバーの豚(トン)と鉄条が刃を向けてしまいました。
「カース」の能力は、自分に向けられた殺意や攻撃を全て跳ね返すことです。
豚と鉄条はそのため、深い傷を負います。
「カース」となった栗鼠はアジトを立ち去りますが、豚と鉄条の傷は治ることがなく、夏木と毒蛾はアルバイトで回復魔法の瓶を買おうとします。
しかしこのままでは死んでしまうと判断した牛島田と佐治は、ボスのナイフを質に入れようと提案。
毒蛾はその途端、人が変わったかのように牛島田を抑え込み、それだけは絶対にしてはならないと言いつけます。
ですが、このままでは確かにメンバーの命がありません。
毒蛾は回復魔法や修復魔法のルートを独占する組織「シャイターン」に侵入し、魔法の瓶を強奪しようと考えます。
魔法使いになったアス、そして会川登場
悪魔としての皮を剥がされ、血まみれになったアス。
彼はベリスに移動しニカイドウを助けようとしましたが、救助に失敗。
何とかニカイドウが「カイマン」と呼ぶ男を救出することに成功し、ベリスから遠く離れた土地で気を失います。
しかし救助したはずの「カイマン」という男はすでに冷たく、まるで死んでいるように見えます。
アスの横に倒れた男は、悪夢にうなされます。
ニカイドウという女性を殺し、その後は肩から上のない男と会話をするのです。
その間にも記憶の鱗片が浮かび、毒蛾や栗鼠の顔が浮かびます。
苦しさから男は、このまま俺を死なせてくれ、と願うのです。
その時、アスの横で倒れていた男の指がわずかに動きました。
次にアスが目覚めた時、彼はベッドの上に寝かされていました。
マスクを被った大きな男が、自分は会川だと名乗ります。
会川は体中の皮膚を剥がされたアスと自分が一緒に倒れていたため、この「アバドン」という村の家で手当をしたと言います。
アスは、カイマンのこと、ニカイドウのことを聞きますが、会川は全く心当たりがないというのです。
しかも、会川の服はあちこち破れていたものの、キノコに貫かれた傷などは一切無かったと言います。
アスは会川の存在を疑問に思いますが、まずはニカイドウを救出しようと考えます。
会川がアスの全身を包帯でくるみ手当をしたあと、アスは簡単な礼だけを告げてその場から移動魔法を使いました。
とっさのことだったので、アスの腕をつかんだ会川までワープしてしまいます。
そこは、煙の屋敷でした。
藤田、キクラゲにエビスの復活をお願いするも大苦戦!
藤田は死んだエビスの体を抱え、煙のもとに向かいます。
煙にエビスの死を伝え、キクラゲの力でよみがえらせたいと伝えると、煙は意外なことを言います。
キクラゲは煙のペットではなく、ファミリーの一員であるため自分は関与できないというのです。
キクラゲの気分次第によって、エビスを復活させることが出来るだろうと言われた藤田は、何とかキクラゲにエビスを復活してもらおうとキクラゲに近づきます。
ところが、キクラゲは死臭が大嫌い。
すでに腐敗し始めているエビスの死体に、キクラゲは逃げ回ります。
まずは能井にエビスの体を綺麗にしてもらおうと決めた藤田は、能井の部屋に向かう途中に鳥太と出会います。
エビスが死んでしまったことを藤田が伝えると、気の毒に思った鳥太が「いつも楽しい気持ちでいられる」悪魔の髪留めをエビスの髪の毛につけてくれました。
そのまま能井の部屋に向かった藤田ですが、あいにく能井は煙のキノコの化物を使った特訓中です。
懸命に声をかけようとした藤田は、勢い余った能井の一撃を食らい失神してしまいます。
能井の声で目覚めた藤田は、ようやくエビスの死体を修復してほしいと伝えることが出来ました。
能井は了解すると、乱暴にエビスを起こしケムリを吹きかけます。
そのとき、鳥太からもらった髪留めがエビスの頭の中に入ってしまいました!
慌てる藤田ですが、能井はこのままで問題ないと言い、藤田を部屋から帰します。
腐敗臭が取れたエビスを再びキクラゲのもとに差し出す藤田。
しかし今度はキクラゲが藤田に怯えてしまいます。
煙特製のキクラゲの防衛システムが働き、キクラゲの首輪から藤田に向かって刃が放たれました。
慌てて逃げる藤田。
今日中の復活を諦めエビスの部屋に遺体を置きます。
そこに、キクラゲが姿を見せました。
エビスとキクラゲは仲良しで、エビスはいつもキクラゲにおやつを与えていたのです。
おやつ目当てでエビスに近づくキクラゲですが、エビスに何の反応もないのを見ると、「命を与える」白いケムリを放ちます。
こうしてエビスは復活したのでした。
十字目組織の内職、毒蛾の行動
毒蛾は豚と鉄条の回復のため、単身で「シャイターン」本拠に侵入します。
「シャイターン」の魔法使いは自由に回復・修復系の魔法を使えることから、夜ごとパーティーを行い美女たちを自分たちのアジトに集めていました。
夏木のアルバイトの制服を借りて女装した毒蛾は、「シャイターン」のメンバーに気に入られそのままアジト侵入に成功します。
さらに毒蛾は、全員が飲める酒樽に自分の毒を入れます。
酒を飲んだ魔法使い達が倒れ、「シャイターン」全員がその場に向かった隙を狙い、魔法の瓶を奪おうとしました。
しかし、女性たちを心配してやってきた「シャイターン」のメンバーに毒蛾は発見され、攻撃を受けます。
ナイフ術に長けた毒蛾は全員の急所を貫き、見事回復魔法の瓶の強奪に成功しました。
ですが、これは毒蛾にとって本意ではありませんでした。
ボスのいない組織は弱く、「シャイターン」を魔法なしで殺したとなれば、煙が十字目の仕業であることに簡単に気付くはずだからです。
煙にバレない内に、ボスに早く戻ってきてほしい。毒蛾はその場を立ち去りつつ考えるのでした。
回復を拒むニカイドウ、そして会川
ニカイドウは煙の屋敷の一室に手厚く保護されていました。
能井がニカイドウの傷とキノコを修復しようと魔法を使うも、効果が一切ありません。
悪魔の力によって、能井の力が妨げられてしまうのです。
煙との契約をあまりにも強く拒否するニカイドウは、本来復活するはずの悪魔の契約書を拒んでいるため、能井の魔法が効かなくなってしまいました。
仕方なく能井のケムリを点滴形式で体内に入れるニカイドウ。
その場に心とカスカベ博士、ジョンソンが現れます。
心はベリスで拾ったカイマンの頭部を煙に見せ、煙に「カイマンを確実に殺した」と安心させたのです。
カスカベ博士はニカイドウにカイマンの頭部を見せつつも、おかしい部分があることを伝えます。
カイマンの頭部のトゲがすでに切断されていること。
頭部に解剖された痕跡があること。
そして何より、首の切り口が心のハンマーと一致することです。
ニカイドウはカイマンが既に人間の顔に戻っていたことを、カスカベ博士に伝えます。
実はこの話を藤田は聞いていました。
エビスが死亡し、カイマンの魔法が解けたのです。
そのため、カイマンは顔を取り戻したのでしょう。
ニカイドウの傷は日増しにひどくなり、片方の目からはキノコが生えていました。
それでも煙と契約するつもりにはならず、ニカイドウは無気力に日々を過ごしていたのです。
アス、ニカイドウを救出する
煙の屋敷に瞬間移動したアスと会川は、ニカイドウの部屋に向かいます。
すっかり意気消沈していたニカイドウですが、アスと再び会うことが出来て安堵の表情を浮かべました。
しかしチダルマによって、魔法使いに戻されてしまったことをニカイドウはアスに謝罪します。
アスは、過去にニカイドウに助けてもらったことがあり、そのおかげで悪魔になれたのだから問題ない、と答えるのでした。
その時、ニカイドウはアスと共に現れた男に注目します。
会川は関係ないのに連れてこられた、と文句を言いその場を去ろうとしました。
しかし、ニカイドウは会川の声がカイマンに似ていることに気づきます。
マスクを取ってくれないか。
ニカイドウは会川に懇願します。
会川は拒否し、立ち去ろうとしました。
しかし「カイマン!」とニカイドウは叫びます。
それでも会川は、そんな奴は知らないというのです。
力尽くでマスクを奪おうとするニカイドウ。
点滴の管を取り、傷だらけの体で会川に襲い掛かります。
しかしあっさり会川にかわされ、ニカイドウは反対に壁に頭を打ち付けられてしまいました。
それでもニカイドウは「カイマン」と呼び続けます。
会川は自分のマスクを外し、その顔を見せました。
ニカイドウはしっかりと顔を近づけ、確認します。
さよなら。
ニカイドウがその言葉を聞き取ったと同時に、会川は窓から逃げ出してしまいます。
アスと彼女は取り残され、唖然とするばかりでした。
彼がカイマンなのかは、ニカイドウにはわからないままです。
それでも追いかけたいとニカイドウは決めていました。
煙、死亡
「シャイターン」襲撃事件を聞いた煙は、十字目組織の仕業だとすぐに理解します。
早速心と能井に声をかけ、「シャイターン」周辺に十字目組織が潜んでいないかを確認しろと命じました。
煙は確かに十字目のボスを倒したのか、不安が頂点に達します。
もし「シャイターン」襲撃事件が十字目のボスの仕業だとすれば、自分が息の根を止めるしかありません。
生き返ったエビスは、藤田と屋敷内を歩いていました。
エビスは留め具を頭の中に入れたまま生き返ったため、常に笑っている不気味な少女となります。
藤田は、煙にエビスがこのままファミリーでいられるようお願いをしに行こうと考えていました。
その時、藤田とエビスを巨大な違和感が襲います。
周辺の空気が歪み、エビスの目が回ります。
苦しさをこらえながら藤田は窓の外を見ると、首のない男が窓向こうの通路を歩いているのを見つけました!
尋常ではない空気を感じた藤田は、単身その男のもとに向かいます。
鳥太と煙は、ニカイドウのもとを訪れようとしていました。
そのとき、悪魔の像の下にひどく怯えているキクラゲをふたりは発見します。
安全装置が外れていることから、キクラゲは何者かに襲われたのでしょう。
途端に周囲の空気に異変が起こり、気分が悪くなるふたり。
煙は廊下の向こうから、男が歩いてくるのを見つけました。
とっさに鳥太にキクラゲを預け、鳥太の頭部のキノコを巨大化させる煙。
キクラゲを安全な場所に連れていってほしいと、鳥太に託し窓から鳥太とキクラゲを逃します。
男は、部下の首とキクラゲの安全装置の刃物を持っていました。
間違いなく十字目のボスが現れたのです。
煙はすかさず煙を吐こうとします。
しかし、空気が詰まりケムリを吐くことが出来ません。
煙の片腕が切り刻まれ、地面に落ちていきます。
それでも、煙はケムリを吐こうとしたのですが……。
キノコ傘の要領で飛ばされた鳥太のキノコは、突然消えました。
煙の魔法が解除されたのです。
それの意味することを知り、鳥太は泣き叫びます。
心と能井はベリスの宿に生えたキノコが、崩れていくのを発見します。
そして現場にかけつけた藤田は見たのです。
煙の首がもぎ取られ、黒い腕がその首を天井にさらっていくところを。
感想。煙が死んだ!会川の正体はカイマンでしょ?
前回はカイマン、今回は煙……もう、どうなっているんでしょう。
この漫画はどうなるの?と読んでいて本当に思いました。
主人公とラスボスが同時に消えた漫画は珍しいと思いますが、当時はきちんと「ドロヘドロ」が完結すると思っていなかったので、リアルタイムで読めたりした場合はラッキーと言えるかもしれません。
煙はよくネットなどで言われている通り、根っからの悪人ではありません。
むしろファミリー思いで、そのための脅威は徹底的にやっつけるという親分らしい親分です。
キクラゲを愛する可愛らしい部分もあります。
しかしこうも後味悪く殺されてしまうとは。衝撃が強かったです。
そしてなんといっても会川が怪しすぎます。
会川は明らかに「カイマン」と思われますが、何故それをニカイドウに隠すのでしょう。
そしてあのカイマンの首。
何故あそこにころがっていたのか。多くの不思議が残されていますね。
後半にはこの部分の謎も解かれますが、この伏線は相当解くのが難しいと思われます。
さらに栗鼠は、「口の中の男」であった魔法「カース」とついに一体化します。
「カース」は正直強い魔法で、能井の修復のように貴重な魔法です。
悪魔でもこのスキルを持っている者は珍しく、魔法訓練校ではよく能力がわかっていないともされています。
ほぼ無敵状態となった栗鼠こと「カース」は、十字目のボスが生きて入ればボスのところに向かうでしょう。
その「ボス」は……ナイフの達人で、毒蛾にナイフを預けている人物。
「黒い粉」を作り、魔法使いになる手術が出来る人物です。
あれ?もしかしてそれってアイじゃないのか?となるのですが、
カイマンがアイなのでは?
それともボスがアイなのか?
大混乱のうちに11巻が終わります。