今回は、ビッグコミックスピリッツ系雑誌で連載された、林田球・作「ドロヘドロ」10巻の紹介です。
記憶を無くしたトカゲ男・カイマンが本当の自分の姿を探すため、魔法使いの世界を旅するダークファンタジーとして知られています。
個性的な登場人物たちや、謎めいた舞台設定が人気です。
前回の話:ドロヘドロ【9巻】のネタバレと感想。カイマンとニカイドウ最後の夜。
ドロヘドロ【10巻】のあらすじとネタバレ
【まさかの「さよならカイマン」!煙がニカイドウを奪還する】
ベリスで思いがけず十字目組織の幹部たちと接触したカイマンは、栗鼠に会わせてほしいと依頼します。
しかし、屋敷で目覚めた煙がニカイドウを奪還しにベリスを訪れます。
煙はトカゲ男も自分の手で殺す、と言いカイマンに魔法を使い、カイマンはそれに立ち向かうのですが…。
一方、ホールではコールマン氏の孫の行方の捜索が行われていました。
ゾンビになっていないことを確認したカスカベ博士は、再び魔法使いの世界でコールマン氏の孫、「十字目組織のボス」を探します。
魔法使いになりたかった少年
15年前のホール、カスカベ博士の「カスカベ診療所」にひとりの少年が訪れます。
カスカベ博士の本を読んだ少年は、どうすれば魔法使いになれるのかを尋ねに来たのです。
少年は「アイ」と名乗り、以後診療所で博士の手伝いをします。
アイはこの町で生きている意味が見つからないと言い、カスカベ博士の研究室で自らも魔法使いについて研究を行っていました。
ある日、町内会の人々が魔法使いを見つけ廃物湖に投げ入れたという噂を耳にしたカスカベ博士とアイは、魔法使い救助のために湖に向かいます。
しかし、魔法使いの男はすでに水中に沈み、汚水や排水にまみれ助けることは不可能でした。
帰ろうとした博士でしたが、アイが突如その湖に飛び込んでしまいます。
博士が慌ててアイと魔法使いを引き上げ診療所まで連れて行ったものの、アイの命は残りわずかでした。
虫の息でアイは、博士に自分の机にあるノートを見て欲しい、と言い出します。
ノートに書いてあったのは、魔法使いの遺体を自らに移植することで、魔法使いへとなる手術の方法でした。
アイは密かにこの計画を立てていたのです。
アイは形だけでもいいから、魔法使いとして死にたいとカスカベ博士に懇願します。
博士はアイの願いを叶えるため、魔法使いの遺体を使い手術を行うことにしました。
手術の結果、アイは奇跡的に一命をとりとめます。
カスカベ博士は資料として、アイの回復の様子を1日ずつ写真に収めていきました。
ある日、アイは博士に言います。
「俺、魔法使いになったよ」。
しかし、アイは外出した次の日に死体として発見されたのでした。
カスカベ博士は自治体で、「リビングデッドデイ」にアイが復活しているかを確認します。
しかし、自治体にはアイが復活した記録は存在しません。
蝋人形の十字目のボス、あれはアイ君なのではないだろうか?
博士は心と能井や老コールマン氏が待つ屋台にまで急行します。
カスカベ博士は、コールマン氏に「アイは自分の体を魔法使いに変える手術を受けている」ことを伝えます。
しかも手術後もアイは何かを計画し、実験を重ねていた形跡があるのです。
カスカベ博士はアイが生きている可能性があると考え、魔法使いの世界に侵入することを思いつきます。
危険を顧みない博士にあきれる心ですが、昔のよしみで魔法使いの世界へのドアをその場に出し、一緒に戻る事にしました。
サーティーンはその様子を見て、バウクス先生にカイマンも魔法使いなのでは? と問いかけます。
しかしバウクス先生は首を横に振るばかりでした。
カイマンの首についてはすでに何度も検査を重ねており、どう考えてもカイマンの体は人間のものだったからです。
エビスの帰宅、そして再びエビス死亡!
記憶を取り戻したエビスは、まっすぐ自分の家に戻ります。
藤田はエビスを追いかけますが、エビスは何とか藤田の尾行から逃れようとします。
途中で通過したクラブのボスと藤田が魔法対決をしている隙にエビスは懐かしい自分の家に辿り着きました。
チャイムを鳴らし、父と母を待っているとドアが開かれ、ひとりの少女が現れます。
彼女は昔のエビスのマスクをかぶっており、「私はエビス」と名乗るではありませんか!
エビスは自分こそエビスだと言い張り、強引に屋敷内に入ります。
ですがそこに父と母の姿はありません。
ドッペルゲンガーだと思ったエビスは、追いかけてくる少女から逃れるべく奔走します。
その時、戸口からエビスをかくまう存在が現れました。
エビスのばあやです。
ばあやによると、エビスを迎えた少女は父と母が魔法使いに頼んで作ってもらったエビスのコピーということでした。
エビスが失踪し、悲しみに耐えられなくなった両親が魔法使いを呼んで、わざわざ作らせたのです。
しかし似ているのは外見だけで、中身は乱暴で荒々しくとてもエビスと同じとはいえませんでした。
騙された両親は屋敷を捨て逃げ出してしまったのです。
行き場のないばあやだけがこの屋敷に残っていたのでした。
そこでニセのエビスがばあやの頭をオーブンの棚でかち割ってしまいます。
クッキーが焦げたことに怒ったニセエビスは、さらに本物のエビスに襲い掛かります。
慌てて自分の部屋に逃げたエビスは、隠し場所にしまっておいた「黒い粉」を服用し、トカゲに変身!
ニセエビスに攻撃をしかけます。
エビスの家に藤田が到着したのは、エビスの魔法がちょうど解除された時でした。
唖然とする藤田でしたが、ニセエビスはまだ息がありエビスの頭を半分切断してしまいます!
藤田は何とか怪物と化したニセエビスを殺そうとしますが、藤田の魔法の威力では効果がありません。
藤田はやむを得ず、その場にあった「黒い粉」を飲み込みます。
途端にエネルギーが溢れ、藤田の魔法の威力はアップし無事にニセエビスを倒すことに成功しました。
しかし藤田のもとに残ったのは、半身を引き裂かれたエビスの死体だけです。
藤田は慌てて屋敷に戻り、キクラゲと能井にエビスを蘇らせてもらおうとします。
煙VSカイマン!死闘の果てに
鳥太の手当によりベッドで眠らされていた煙は、目覚めます。
まずは怒りをそのまま鳥太にぶつけ、鳥太の頭部をキノコに変化させたあと、煙はベリスの町にホウキで急行します。
眠れないカイマンは宿周辺を散策していました。
すると近くで自動販売機のおつりを漁る男たちに遭遇します。
彼らの目に刻まれた十字目を見つけ、ナイフを構えるカイマンでしたが、先に十字目幹部・鉄条が刀をカイマンの首元に押し付けていました。
何者だ、の問いに思わず栗鼠の友達だと答えるカイマン。
そのままカイマンは十字目幹部たちに栗鼠に合わせて欲しいと言いました。
ピンときた毒蛾は、会川か? とカイマンに尋ねます。
カイマンが答えない内に、突如ベリスの温泉宿から巨大なキノコが生え、建物を破壊しました!
キノコであることからその場にいた全員が、煙が来たと把握します。
十字目幹部たちは温泉宿から離れ、カイマンはニカイドウの元に走ります。
ニカイドウを背負い逃げ出そうとしたところを、キノコに乗った煙が立ちふさがりました。
カイマンの怒りは頂点に達し、ナイフを構え煙を殺そうとします。
煙もカイマンを殺すためケムリをカイマンに吐き出しましたが、カイマンには魔法が効きません。
しかし煙は余裕でした。
カイマン自身に魔法が効かなくても問題ない、煙はそう言います。
その途端、カイマンの腹部からキノコが生えました!
カイマンが吸い込んだキノコ胞子を急成長させることで、ダメージを与える事は煙には造作もないことです。
カイマンのピンチに、ニカイドウは煙を大きく蹴り上げようとします。
しかしその足を反対にキノコに変えられ、ニカイドウは倒れてしまいました。
煙は契約しているはずのニカイドウが、自分に攻撃出来たことに驚きます。
そんなにこの男が大切なのか?煙はニカイドウに問いかけました。
ニカイドウは大事だ、たった一人の大事な友達なんだ、とはっきり煙に言いました。
その時、カイマンが煙の横顔に拳を入れます!
カイマンの包帯マスクは取れ、すでに血まみれでした。
しかし驚くべきことに、そこにあったのはいつものトカゲの顔ではなかったのです。そこにあったのは人間の顔でした。
カイマンはそのまま、煙に最後の一撃を浴びせようとします。
煙はケムリで応戦し、ニカイドウはカイマンをとっさに庇いました。
キノコの重みで地盤が崩れ、カイマンは地面に落ちていきます。
全身をキノコで貫かれたカイマンは、「ギョーザ、食いてェな…くそっ」という言葉を残して目を閉じました。
その体から霧のような生き物が吹き出します。
「口の中の男」の影、栗鼠の亡霊でした。
お前はオレではなく他者によって殺されてしまった、栗鼠の亡霊はそう言い残してカイマンのもとを立ち去っていきました。
残された「カイマンの首」
心、能井、カスカベ博士はちょうど屋敷に戻り、そのままベリスに向かったところで煙による惨状を目にします。
意識を失ったニカイドウは、心の中でカイマンに帰ろう、と言いながらも煙に屋敷に連れていかれました。
心とカスカベ博士は、カイマンが死んだことを疑わしく思い遺体を捜索します。
ベリスの温泉のもとになる溶岩のため、遺体回収は難しいと思われましたが、地面にトカゲ頭のカイマンの首が転がっているのをふたりは発見しました。
カイマンは本当に死んでしまったのでしょうか。
煙から逃れた十字目幹部の行先は…
十字目幹部たちは煙から逃れ、草むらに身を隠していました。
ひとりひとりがボスのことを思い出し、ボスとの思い出を話していきます。
ボスは強くナイフの達人で、魔法使いにひるむことがなかったという話もあれば、黒い粉の製造所の暗闇で、魔法使いの腫瘍を何度も数えていたという恐ろしい姿を見たという者もいます。
ボスはまだ、帰ってきません。
一方、十字目幹部のアジトに拘束中の栗鼠は、暗闇の中に浮かぶ人影を発見します。
誰だ、と警戒する栗鼠。謎を残したままこうして話は終了します。
感想。まさかの主人公死亡!ニカイドウがかわいそうすぎる…。
せっかく良い雰囲気になったカイマンとニカイドウですが、まさかのカイマン死亡!というアクシデントでニカイドウは煙にさらわれてしまいました。
普通主人公が離脱するとは考えないので、この展開には正直驚かされました。
しかもカイマンの正体がわかりかけているときに死んでしまうという……話はどのくらい続くのか、心配になりました。
結局カイマンは何者だったのか、それすら明かされていないのでそのまま本当にいなくなるとは衝撃的すぎました…。
栗鼠も複雑な存在です。
栗鼠は死亡していた存在で、復活しています。
では「口の中の男」である栗鼠は何者?となるのです。
正直このあたりも大混乱でした。
しかもカイマンの体から栗鼠が出ていくシーンも描かれています。
栗鼠が2人いるのかどうかもわからないので、このあたりは全く予想が出来ませんでした。
カイマンと一緒にホールに戻るというラストを予想していましたから、ニカイドウが煙に連れ去られるラストも悲しかったです。
ほぼ敵側の勝利として終わる10巻なので、非常に驚かされました。
しかもラストのカイマンの首、よく見ると「トゲ無し」なのです!
トゲ無しということは、煙との戦い中のカイマンの首ではない……と気づくとますますこの先がわからなくなりました。
このわからない!の連続のため次の巻、次の巻を飼い続けてしまうのです。
主人公が死亡したあと、話が長く続く漫画もなかなかないと思いますが、まだまだこの先巻数があることだけが救いです。